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君、花海棠の紅にあらず|第29話・30話・31話・32話のあらすじ

『君、花海棠の紅にあらず』のあらすじ第29話~第32話(全49話)

こちらの記事では『君、花海棠はなかいどうべににあらず』第29話~第32話までのあらすじとネタバレをまとめています。ネタバレを見るには をタップしてください😃

今回から新たに登場する人物

林丹秋リン·ダンチウ:寒香社の役者。師叔は商細蕊

あらすじ第25話~第28話を見る

第29話 勝利への畏怖

梨園一の役者を決める人気投票は商細蕊、寧九郎、姜登宝、当て馬の四喜児による決選へ。だが勝利を予想された商細蕊は辞退すると言いだす。商細蕊にとって永遠の1位は心の師である寧九郎。だが、自らが勝てば寧九郎の衰えを受け入れざるを得ない。商細蕊、寧九郎どちらも不在の梨園会館では、開票結果が発表されようとしていた。


寧九郎が出ると聞いた四喜児は、当て馬役とも知らずに承諾する。息子の登宝は寧九郎が有力だと見ているが、姜栄寿は商細蕊に嫌がらせをしたいだけで、四喜児を当てにはしていない。それに姜栄寿は、四喜児と親しくないから黒幕だと思われる心配もない。

北平時報社に杜洛城の姿があった。洛城は商細蕊が優勝すると信じて疑わない。名簿の中で決勝に残るのは寧九郎だと予想している。長く休んでいたが、必ず残ると断言する。薛社長は陳紉香が入ると予想。新聞に”陳先生が長春・北平・上海で大成功を収める”と載っていたからだ。これを聞いた洛城は、やらせ記事だと決めつける。あきれた薛社長は別の記事を読む。”商細蕊の新しい演目は時代を先取りし若者の審美眼や好みに合っている”。洛城は素晴らしい文章だと自画自賛する。そして姜栄寿も入ると付け加える。姜一族だから必ず入るという見解に薛社長もうなずく。

程家を取り仕切る范湘児。何日発っても韓総監から連絡がこない。奉天は遠くて知り合いもいないから時間がかかると春杏がなだめる。この頃程家に顔を見せない范漣は水雲楼にいた。小躍りして状況を知らせる。商座長が最終選考の4人に残った。寧九郎と姜栄寿は当然残ったが、残りの1人は四喜児だと教える。座員たちは驚くが、細蕊は寧九郎が入った喜びの方が大きい。義父でも勝てなかったのだから、優勝は寧先生だと言い切る。寧九郎になら負けても構わないと言う細蕊に、漣や座員が檄を飛ばす。

投票の宣伝をする水雲楼の座員たち。みんな必死に商細蕊に入れるよう呼びかけている。馬番頭も客に宣伝し、運転手の葛さんは人力車の割引券を配る。漣は大きな看板を作った。それを見た細蕊が、看板を下げろと飛んで来て、参加をやめると言い出す。5年に1回しかない投票だと鳳台は止めるが、細蕊の中では寧先生が1位で、もし自分が負ければ落ち込むし、万一勝ったらどんな顔で寧先生に会えばいいかと悩んでいる。義父の代わりに1位になれと鳳台は勇気づけるが、寧先生とは戦いたくないと逃げてしまう。

斉王は、復帰して1回しか歌ってないのに推薦された寧九郎を誇らしく思っているようだ。これまでの優勝者は寧九郎か侯玉魁で、商菊貞はいつも2位どまりだった。姜栄寿は会長になってから1回だけ優勝している。斉王は商細蕊という若者が登場したことを喜ばしく思っている。新聞を買って投票してやろうと言う斉王に、寧九郎は商細蕊に投票するよう念押しする。

新聞を買う長蛇の列に変装した商細蕊がいた。寧九郎に10枚買う。隣の客が負けじと商細蕊に20枚買う。残りを全部買い占めたい細蕊だがお金が足りない。その代わりに寧先生を悪く言う客たちを叱りつけると、邪魔してないで引っ込めと追いやられてしまう。

水雲楼に戻り、コソコソと印鑑を持ち出す商座長。様子を見ていた小来が止める。二旦那のためだと勘違いした小来は、二旦那はお金がかかると今までの不満を商座長にぶつける。1年経ったら一文も残らないと訴えるが、ここは二旦那が購入したものだ。商座長は二旦那に渡すのではないと急いで出ていく。

第5回目となる梨園の最高峰を決める開票式がついに始まった。鈕白分が1票ずつ読み上げていく。しかし、その場に商細蕊と寧九郎の姿はない。

君、花海棠の紅にあらず 第29話
出典:https://winter-begonia.com

商細蕊と程鳳台は紫禁城にいた。梨園会館に行かないのは、勝つのが怖いからだと細蕊が明かす。以前は義父が怖かったが、ある日、義父の衰えに気づいた。老いに負けた義父。時は誰にも止められない。鳳台が言う。天は万物に期限を与え、期限がくれば誰しも自然に衰える。そして寧九郎も例外ではないと。しかし細蕊にとって寧先生は心の師だから受け入れられないのだ。

梨園会館で最後の1票が読み上げられる。水雲楼の商細蕊に入った。投票が終わり、鈕白分がそれぞれの票数を読み上げる。琴言社の寧九郎は合計3586票だった。寧九郎の人気は20年変わらない。長年休んでいたが付き合いも実力も侮れない。水雲楼の商細蕊も同じく3586票だった。杜洛城と范漣が共に喜ぶ。隆春班の姜栄寿は合計1257票。雲喜班の四喜児はたったの1票。笑いが起こる。
鈕さんが今回の優勝者を発表しようとすると、数えなおせと騒ぎ出す人達。商細蕊が票を集めたのを気に入らないらしい。これを杜洛城が止めに入るが、火に油を注ぐ。大混乱の中、寧九郎の代理人が現れ、まだ1票が残っていると騒ぎを鎮める。その1票は寧九郎に入ると見なした姜栄寿が天意かと不敵な笑みを浮かべる。代理人が台上へ上がり票を渡す。

票を見た鈕さんが戸惑う。代理人は寧先生の意向だと伝えると、鈕さんが優勝者を発表する。優勝は商細蕊だ。

梨園会館に到着した細蕊は息をのむ。代理人が今の票以外に細蕊への贈り物があると言い、赤い布で包まれたものが台上に運び込まれる。”若いおおとりのほうが美声だ 商細蕊の優勝を祝う”と寧先生の言伝を伝え、幕を取る。そこには”梨園の最高峰”の文字。大拍手が起こり、記者がシャッターを切る。梨園の主人の交替を寧九郎は最初から決めていたんだなと薛社長が呟く。

程鳳台が商座長に寧九郎の扁額へんがくを受け取るよう促すが、寧先生はまだ衰えていないと立ち去ってしまう。

翌日、水雲楼に寧先生がお祝いにやって来た。細蕊は昨夜から祖師像の御前で寝ている。寝ている細蕊を寧先生がそっと起こす。まだ夢の中だと思っている細蕊は、祖師様と先生の話をしていたと寧先生の足にまとわりつく。現実と虚構が一緒になる細蕊は、骨の髄まで役者なのかもしれない。夢だと思っている細蕊に寧先生が語りかける。寧九郎は老いを自覚している。幼い時から宮中で育てられたは寧九郎は、舞台上の大勢の人生を体得できない上、芝居に自分の解釈を加えることも出来ず、古い歌しか歌えない。しかし、何度も歌って飽きている曲でも、宮殿の壁を越えなければ更なる上を目指せない。商細蕊に出会えたことが幸いだった。細蕊は子供の頃からしつけに委縮せず、どんな芝居を学んでも質問攻めにしては自分の解釈で演じようとし、失敗も罰を受けるのも恐れなかった。北平に来てからは一層大胆になり、どんな演目も好きなように変えた。それはまるで宮殿に来た革命軍のようで、その力強さが羨ましいと同時に怖かったという。しかし、彼らこそ未来なのだと分かった。細蕊は今の外の空と同じで、どれほど分厚いレンガ越しでも最後には隙間を見つけ出し、光を送ることができるという。寧九郎にも京劇にも細蕊が必要だと伝える。何の話か分からないと言う細蕊に、忘れなければいつかわかる日がくると諭す。

君、花海棠の紅にあらず 第29話

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先生の話は起きてから聞くと言う細蕊のために、寧先生が床を敷いてやろうと扁額を持って来させる。寝ぼけたままの細蕊を床へ運ぶと、寧先生に白髪を見つけた細蕊は1本引き抜き、また寝りにつく。

やっと目覚めた商座長。扁額があることに驚く。寧先生が届けてくれたと小来が教える。本当にいたのかと、寧先生の抜いた白髪を見つける。

細蕊が鳳台を呼び、扁額の上に寝させる。寝心地が悪いと言う鳳台に、寧先生の扁額がどれほどありがたいか言い聞かせる。この部屋に細蕊の宝が全部ある。祖師様、義父、寧先生の扁額、そして二旦那。そう聞いて感動した鳳台が細蕊を見つめる。細蕊は、今後は説教を控えるようにと言って出ていく。扁額の上で寝転がる鳳台。

第30話 最愛の妹

梨園の頂点に立った商細蕊の元に広告の依頼が殺到する。気が進まない商細蕊だったが、程鳳台のために不慣れなことを引き受ける。そんな中、劇楼に来ていた察察児が程鳳台に憎しみを抱く者に誘拐される。妹を守るために究極の手段を選び、苦渋の決断をする程鳳台。そんな程鳳台の元に、范湘児が捜し出した女性が会いに来て…。


商細蕊の優勝を祝う范漣。細蕊が頂点に立ったお祝いに、連続公演を行うと群衆に知らせる。観劇料は半値だから早く買わないと売り切れると急かす。

察察児が程鳳台と一緒に第一楼にやって来た。北平ではここが一番楽しいという鳳台。細蕊の大事な衣装に手を触れる察察児に、見るだけにするよう注意する。そこへ范漣が広告依頼の話を持ってくる。優勝した細蕊に、多くの会社から依頼が殺到したのだ。一番金持ちそうな石鹸製造に決める。報酬を弾んでもらうつもりだ。吹っ切れた細蕊は、金のためなら何でもやると意気込む。約束を反故にしない細蕊が心配になった漣は無理をさせないよう、義兄は姉と喧嘩しただけで文無しではないと執り成す。鳳台も家に帰れば好きなだけお金は持ち出せると話を合わせる。

商細蕊が広告に出てくれるとは意外だった漣。鳳台のために稼ごうと必死な様子に、あんなに単純だと人から付け込まれると心配する。しかし、広告や録音は労力を使わず稼げる仕事だ。鳳台は受けて当然だと、金を遠ざける細蕊の性格を矯正させたい意向。

そこへ警察局がきたと知らせが入る。緊急事態のようだ。観客に知られてはデマになるので、誰も通さないよう指示し、察察児を漣に託して鳳台は出ていく。絡子嶺の二親分が脱獄したと警察官が伝える。二親分は鳳台を恨んでるので注意が必要だ。

芝居は始まっている。1人で観劇している察察児の所へ二親分が来る。ここの雑用係と偽り、鳳台が呼んでいると察察児を外へ連れ出す。その様子を細蕊は芝居をしながら見ていた。

鳳台が戻り、察察児がいないことに気づく。漣も座員たちも姿を見ていない。慌てて外へ走る鳳台。すでに細蕊が助けに来ていた。衣装姿のまま二親分に槍を向けている。察察児は二親分に羽交い絞めにされている。以前、隠れ家に乗り込んだ細蕊に痛めつけられた二親分。細蕊を思い出すと察察児に銃を向ける。妹を放せと叫ぶ鳳台。二親分が銃を発砲して威圧する。鳳台は二親分をなだめるが、銃を降ろそうとしない。激情しており危険な状態だ。察察児を放すよう必死になって説得する。しかし二親分は、鳳台に苦汁を味あわせようと、妹を慰み者にしてやると挑発する。

君、花海棠の紅にあらず 第30話

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鳳台がゆっくりと二親分との距離を詰めていく。細蕊が真を見計らって槍で銃を叩き落し、二親分を縛り上げる。往生際の悪い二親分は、牢獄から出たら察察児を慰み者にして殺してやると罵る。怒りが頂点に達した鳳台は察察児を細蕊に頼み、拾い上げた銃を二親分に向ける。尚も挑発し続ける二親分。鳳台が引き金に手をかけると、細蕊は察察児の耳を塞ぐ。銃声と共に察察児が悲鳴をあげる。

ショックが癒えない察察児に付き添う鳳台。運転手の葛さんが旅券を揃えたと知らせに来る。イギリス大使館で香港行きの手続きをさせる指示を聞いた察察児は香港行きを拒否する。察察児を手放したくない鳳台は先送りしていたが、今は一刻を争う事態だ。北平は鳳台の商売柄、常に危険が付きまとう。全てが落ち着いたら必ず迎えに行くと約束する。

范湘児の部屋の外で葛さんが跪いている。家の話を鳳台に伝えたと湘児は腹を立てている。察察児の香港行きの話も内緒にされていた。一人で旅立った察察児を心配するが、姉である美心は、香港へ行ってくれたと喜ぶ。そこへ韓総監が、奉天で捜した人を案内する。

水雲楼で食事をとる一座。鳳台は察察児が心配で食欲がない。離れてまだ半日しか経っていない。香港にやるなんてどうかしていると細蕊が咎める。クラクションの音を聞き外へ出ると、韓総監が客人を連れていた。その女性が春萱の弟子だと名乗る。

君、花海棠の紅にあらず 第30話
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弟子が師匠・春萱の話を聞かせる。師匠の引退後、春萱の名を引き継いだ。師匠は今も舞台に上がっているが、長く演じる体力はない。弟子を連れて各地を渡り歩いてる。高齢で大きな一座には雇われないが、農村が舞台の話は受けがいい。今度、舞台から完全に引退するので、記念に作ったレコードを差し上げに来たという。
差し出されたレコードを鳳台が受けとる。静かに眺め、微笑む。

弟子を見送る鳳台が、何かあれば力にあると伝える。いい一座を紹介できると話す鳳台を遮り、舞台に立つのは自分が楽しむためだと師匠の話を持ち出し断る。その様子を見ていた細蕊は、自信を持ち堂々として、春萱もきっとよい役者だったはずだと思いを伝える。

その後、鳳台と細蕊はレコードに耳を傾ける。

生涯、人を愛し恨んだ春萱。人気役者になり、名家の子息の側室にもなった。子供を産み育て、多くの弟子もとった。人生を十分に謳歌し全てやりきったが、母親として心残りがあった。そこで息子を探して母を覚えてるか聞いて欲しいと頼む。覚えていたら春萱からの贈り物だと、レコードを息子に渡すよう託す。

死んだら芸名を受け継ぐよう頼まれた弟子。師匠は今も元気で舞台に立っていると鳳台に伝えた。真実を知らない鳳台は、懐中時計の母の写真を見てほほ笑む。

程家に電話が入る。上海の製綿工場で機械が爆発したという。范湘児は弟に相談するが頼りにならない。お金を渡して穏便に済ませようとする。湘児は、爆発の原因を究明と、負傷者の医療費の負担、新聞社の対処法を指示し、他人任せの弟に呆れる。

スーツ姿で写真撮影をする商細蕊。固くなる細蕊はポーズもぎこちない。光るものを見るのが怖くてレンズを見れないらしい。

君、花海棠の紅にあらず 第30話
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鳳台が蓄音機を用意させる。寧九郎と侯玉魁の「四郎探母」が流れると笑顔になる細蕊。動きが自然になる。思い通りの写真を撮れた撮影者が、細蕊に記念撮影を提案する。自分の衣装で鳳台と一緒に撮りたい鳳台。有名人や広告塔じゃないと鳳台は断るが、2人で撮るいい機会だと撮影者の勧めもあり受け入れる。急いで着替えた細蕊は、背景の絵が花海棠の木だとはしゃぐ。2人で写真に納まる。

范漣が水雲楼で鳳台の帰りを待っていた。鳳台に助けてほしいと泣きつく。上海の製綿工場の噂を聞いていた鳳台だが、湘児に追放され、范家のことには関われないと突き放す。見捨てるつもりかと案じる漣に、大丈夫だと細蕊が耳打ちする。今は格好つけてるだけで内心喜んでると見透かしている。すると「范漣 入ってこい」と鳳台が呼びつける。

遅くまで仕事をする湘児を心配した程美心がお粥を持ってくる。疲れた顔を見せたら鳳台が悲しむと言う美心に、仲睦まじく見えるだけと反論する。夫婦で各々の役割を果たしていただけで、優しいのは愛してるからではないと言う。鳳台は大金を自分の好きなことに潔く使うが、水雲楼ほどにかけるのは見たことがない。
帳簿を見て鳳台を尊敬したと湘児が明かす。范家は一時的に程家を救っただけで、鳳台が程家を再興した。鳳台には度胸と商才がある。能力がなければ持参金も消えていたと、湘児は自分の間違いを認める。今の言葉を鳳台の前で言えば仲直りできるのにと美心が呟く。

上海の屋敷に戻った鳳台。大階段を上りながら悲しい過去を思い出す。大事なピアノを持ち出され、使用人たちが次々と出ていく。最愛の母までも出て行ってしまう。
ある部屋のドアを開け、中に入る。父と母が言い争う過去が思い出される。額に入った家族写真をそっと撫でる。

第31話 わだかまり

程鳳台の出張中、范湘児は水雲楼を訪れ、商細蕊に文字を習わせ、食事制限をさせる。窮屈さに耐えられず逃げ出してしまう商細蕊だったが、寧九郎の代わりに上海の梨園会館で行われる宴に出席する。迎えに来た役者·林丹秋との再会を喜ぶ商細蕊。しかし、商細蕊は林丹秋が妹のために役者を辞めることがどうしても解せなかった。


韓総監が范湘児に帳簿を見せる。その帳簿は二旦那しか内容を把握してない。目を通した湘児は、夫が水雲楼にかなりの額を使っていることを知る。水雲楼は金食い虫だと呟く。

慌てふためいた大聖が、奥様が大勢を連れて水雲楼へやって来ると知らせる。罵りに来たのかと商座長が隠れようとすると、湘児に声を掛けられてしまう。商座長は笑顔を作り、湘児に挨拶する。

部屋へ通された湘児が帳簿を見せる。字は少ししか読めないと言う商座長に、そんな人が座長を務めてるのかと大げさに驚いてみせ、漢字を教えるよう韓総監に頼む。読み上げれば済むことだと言う韓さんに、商座長も聞けば分かると同調するが、今後もうちの韓に読み上げさせる気かと言い返される。帳簿は程鳳台が管理するので、商座長は芸に専念していいことになっているが、鳳台が戻るまで放置するのかと批判される。役者が芸を修めるのと同じように、字を学べば帳簿も理解できるようになると説得する湘児に、全然違うと商座長が否定する。すると、湘児がもう一言付け加える。細蕊は以前よりふくよかになったと指摘し、減量するよう言いつける。座長なら自分の管理も徹底するべきと注意する。

字の練習をする商座長は間違えてばかり。書き順もあやふやだ。手本をみせる韓さん。嫌気がさした商座長は、水雲楼を解散すると言い出す。一人で芸を売るだけなら字の勉強は必要ないと投げ出す商座長に、あなたのためだと韓さんが根気強く教える。

別室で監視する湘児に、指示通りにしたと連絡する春杏。一座に節度をもってもらうため役者の管理を始めていた。敏腕の鳳台がなぜ制御できないのかと湘児は不思議がるが、役者は難敵で家業の使用人と同じようにはいない。鳳乙が泣き始めた。湘児が代わってあやしていると、小周子の歌を聞いて泣き止む。数日で愛好家に育ったと湘児が皮肉を言う。一方の小周子は一座の異変に気付く。

まだ字の練習をしている商座長は、疲れ果て、腹も減ったと駄々をこねる。韓さんが湘児に呼ばれて出ていくのを見届けると、躊躇なくビスケットを食べ始める。

水雲楼は自立すべきと湘児が非難する。何でも二旦那に頼って、あれでは休む暇もないと文句を並べる。水雲楼のことを韓さんに任せた湘児は、家路につく。商座長の教育を引き受けた韓さんが部屋へ戻ると、商座長の姿が消えていた。
 
寧九郎のところへ逃げてきた商細蕊。これで何度目かと聞かれた細蕊は、姜栄寿は老人で奥様は女性だから殴れず、逃げる以外なす術がないと答える。上海にいる程鳳台を訪ねるという細蕊に、寧先生は上海の梨園会館から届いた宴の招待状を見せ、代わりに出てほしいと頼む。知らない人と話すのが苦手な細蕊は、失礼があっても怒らないよう予防線を張る。苦笑いする寧九郎。

上海北駅に着いた細蕊。林丹秋が出迎えに来た。久しぶりの再会を喜び「師叔」と丹秋が抱き着く。梨園の頂点に立った細蕊は上海でも知名度が高い。

斉王が菜園の手入れをしていると、寧九郎が手伝いにやってくる。役者を辞めるのかと止める斉王。細蕊と共演したあと復帰すると期待したが、家に籠りっぱなしで細蕊も追い出した。細蕊は芸のために荒波にもまれるべきだと考えている寧九郎。読書を好まないので、外で見聞を広めるしかない。経験を蓄えた後は更によい役者になると期待を寄せる。寧九郎はずっと皇宮にいたが、皇宮は特殊な場所で、宮中で織りなされる人生模様は民ではとても見聞きできないのだ。

梨園会館についた細蕊。丹秋が三福班の劉座長と薛先生を紹介する。上海梨園の唐会長は、細蕊を瀟洒しょうしゃで佇まいが美しいと褒める。寧九郎が才を認めた人材だからと寒香者の王先生が加わり、師叔という言葉を聞くと師侄ししつを思い出すという。北平の原小荻は王先生の師侄で同門だと明かす。

寧九郎が舞台に上がったという話は上海にも届いていた。今回は欠席となったが、そもそも寧先生を招待したのは舞台に出てもらうためで、いわば南北梨園の共演というところだ。北方の名優は他にも陳紉香がいる。今は上海にいるが、陛下に芸を披露した役者で、姜会長の仙人歩法も習得した名優だ。その紉香を1年間舞台に立てないようにしたのは細蕊だった。すっかり忘れていた細蕊だが、共演を快諾する。唐会長は感謝を伝え、何か披露してくれないかとお願いする。面の皮が厚いぞと王先生が割って入る。遠方からきた賓客に歌わせるような道理は通らないと、代わりに1曲披露することにし、演目を細蕊に選ばせる。原先生の先達だと聞いた細蕊は、原先生の芸は崑劇の舞台で初めてみたからと崑劇をお願いする。

王先生の歌を聞き、細蕊が子供の頃を思い出す。親の手を放し、舞台へ駈け寄って崑劇に熱中する少年の細蕊。

王先生の歌に涙を流す細蕊。どうしたと丹秋が問いかける。涙をふく細蕊に代わり、虚構に真実を重ね、心で感じたのだと王先生が答える。細蕊は最高の牡丹亭が聴けて、上海に来てよかったと王先生に杯を捧げる。王先生の芸なら全盛期の原先生でも歯が立たないと高く評価する細蕊は、最大の劇楼で高値の券が売れると断言する。しかし、王先生が舞台に立った頃に崑劇はすでに衰退しており、客は入らないと否定的だ。細蕊は寧先生との「断橋」は愛好家に大好評だったと伝える。崑劇が衰退したのは演じるものが減ったせいで、名優が揃わねば民衆は見ないと私見を述べる。今回南方に来た細蕊は、共演は南方発祥の崑劇にしないかと「断橋」を提案する。

細蕊を見送る王先生。台詞合わせの約束をしてると、林丹秋を迎えにきた女性が王先生に挨拶する。誰かと尋ねる細蕊に、丹秋の妹だと教える。丹秋は一人っ子だと聞いていた細蕊。その女性が振り返り、兄を手放すと約束したのに、いつまで舞台に立たせる気かと王先生に詰め寄る。あと2週間だけと言う王先生に、来月兄と故郷へ帰るから、それで役者は終わりだと言い捨てる。なぜ辞めさせると口をはさむ細蕊。その人が商細蕊だと聞いた愛玉は、細蕊の舞台を観たと伝えるが、曽家は名家で役者とは考えが異なると吐き捨てる。不条理な女子だと細蕊はイラつくが、梨園に偏見がある人間もいるから相手にするなと王先生がなだめる。口論する価値もないと、細蕊は人力車で鳳台の屋敷へ向かう。

程鳳台が顧客を見送っている。鳳台の姿を見つけた細蕊は走って抱き着く。また水雲楼で問題が起きたのかと怪しむ鳳台に、写真を渡しに来たと現像した1枚を渡す。

君、花海棠の紅にあらず 第31話
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裏には”知音へ”と書かれている。北平に戻ってからでも良かったと言う鳳台に、上海の役者たちと舞台に立つと伝え、数日部屋を借りたいと申し出る。

妹に謝る林丹秋。なかなか役者を辞めない丹秋に、役者に未練があるからだと妹が責める。最後の舞台にすると誓いを立てる。

君、花海棠の紅にあらず 第31話
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そこへ待ち伏せしていた六兄貴たちが声をかける。丹秋は妹を先に帰らせ、暗がりで話を聞く。最近懐が寒いと六兄貴が金をせびる。借金を完済した丹秋に、妹は金持ちだなと脅しをかける。危機を察した丹秋は、最後の有り金を渡し、生意気を言ったことを謝る。

程家で朝食の時間を迎える細蕊。鳳台が声をかけるが、細蕊は呑気に歌を歌っている。1人で2役を演じ分ける細蕊。部屋から出てくると、1段ずつ降りるのが面倒だと階段の手すりを滑り落ちてくる。誰と掛け合いをしていたと尋ねる鳳台に、安王府で侯先生と歌った部分の2役を演じ分けてみせる。

街で新聞売りが”北平の名優が上海の舞台に上がる”と声を張る。多くの通行人が新聞を手にする。上海でも商細蕊の名は知られている。共演に向けての練習中も細蕊の演技を褒めたたえる役者たち。

記者も盛んにシャッターを切る。明日の新聞の一面記事になるという。丹秋に妹が見つかったと聞いた細蕊は、本当に役者をやめるつもりなのかと問いかける。丹秋の芸は平凡だが他の役者よりは数段格上だし、若いのに辞めてはもったいない。そこに妹が差し入れを持ってきた。細蕊があの妹はどこから来たと声をかける。詳しくは知らないようだが、突然妹が妹が現れ、林丹秋の借金を高利貸しに返したという。丹秋は派手に金を使っていた。酒や賭博に惜しみなく金を注いでいたが、妹が来てからは、一切遊ばず酒も付き合わなくなったそうだ。そんな話を聞いていると、鳳台が北平から運ばせた衣装が届く。

洋食を食べる細蕊はナイフとフォークに苦戦していた。ステーキを切りながら、林丹秋の妹は傲慢だと不満をぶつける。丹秋は舞台を愛してるのに妹はこの生業を見下している。小さいころから修練を積んだ丹秋はようやく芽が出たところなのに妹のために辞めるなんて勿体ない。しかし、妹がいる鳳台にとっては何も不思議はない。役者業より妹のほうが大事だと理解できる。細蕊が自分にも妹はいると言い出す。何でも張り合う細蕊を幼稚だと馬鹿にする鳳台に、嘘ではなく実の妹がいると弁解する。細蕊は記憶があいまいなので今までその話をしなかった。何度も売られ続けた細蕊は、義父に買われた時にはすでに唐詩を覚えていたという。実の親の顔さえ覚えていない細蕊。会いたくても歓迎してくれない可能性もあるし、いらないから捨てたのかもと悲しげに呟く。細蕊を見つめる鳳台は思いめぐらす。

第32話 想起

林丹秋の妹だという女性。その顔を見た程鳳台は驚き、また、妹も顔色を変える。そして、妹の首飾りにある玉を見て驚愕する商細蕊。その日の夜から、商細蕊は幼い日の夢を見続ける。公演を終えた商細蕊は翌朝、林丹秋の妹に会いに行く。表向きは林丹秋の説得を頼むためだったが、真の目的は彼女の家族·曽家について聞くことだった。


林丹秋が六兄貴に金を渡している。また借金をしたのかと曽愛玉は心配するが、賭博で負けた六兄貴に金を貸しただけだと丹秋が弁解する。丹秋は商先生の舞台が終わったら必ず役者を辞めると約束し、雲南に戻ったら実家を整理して、愛玉に入り婿を探すという。やっと会えた妹を嫁には出したくないのだ。

雨が降る中、程鳳台が商細蕊を車で待っている。出てきた細蕊に声をかけ、丹秋も車に誘うが、妹が傘を持ってくるからと遠慮する。妹を紹介された鳳台は目を見張る。一方、細蕊は愛玉の首飾りに目が釘づけだ。

車の中で首飾りの玉を握りしめる細蕊。彼女が曽愛玉だと鳳台が声をかけても上の空だ。范漣が囲った踊り子で鳳乙の実母だと知った細蕊。その夜、細蕊は鳳凰の玉を握りながら眠りにつき、子供の頃の夢を見る。親とはぐれ、必死に探す幼い細蕊。

商先生のおかげで客席の6割が埋まったと喜ぶ王先生に対し、たった6割かと細蕊は不満げ。それでもいいほうで、崑劇では数年ぶりの盛況だ。記者の対応をしている鳳台に、いつも余計なことばかりと細蕊が漏らす。同じくらいの年頃なのに父子みたいに見えると王先生が笑う。実は鳳台から電話があり、寒香社の状況を説明させられた王先生。公演前には好物の肉を準備することも指示されていた。あれほど細やかな人はいないと評価する。細蕊は我が道を行き何事も恐れぬように見えるが、本当に困ったとき相談するのは鳳台だ。

出番になり、崑劇「断橋」を披露する2人。商先生と王先生の本格的な崑劇は大好評だ。蘭心劇場は拍手喝采に包まれる。しかし、細蕊は浮かない顔だ。観客に違和感があり、拍手をする場所が違かったと指摘する。歌を間違えて馬鹿にされたのかと思ったと言う細蕊に、王先生が打ち明ける。寧先生との共演が成功したのは劉漢雲が崑劇好きで、誰も劉を怒らせたくないから。崑劇の衰退は止めようがなく、役者の力量とは関係ないという。観客が関心を持っていると見た細蕊は、理解できるまで崑劇を歌ってやると意気込む。

鳳台が食事に誘うが、丹秋は引っ越しの準備があると辞退する。迎えに来た曽愛玉を目で追う細蕊。商座長でも美人から目を離せない時があるのかと冗談を言う鳳台にムキになる。その晩、細蕊はまた同じ夢を見る。親から手を離し、舞台へ駆け寄る細蕊。舞台に没頭し、気が付いた時には誰もいなくなっていた。

翌朝、朝食の時間になっても細蕊が出てこない。返事もないので鳳台が部屋へ行ってみると、細蕊の姿がない。

曽愛玉を待ち伏せする細蕊。林先生が役者を辞めないよう説得してほしいと切り出すが歯切れが悪い。今の上海には実力のある若手役者がほとんどおらず、十数年の努力を捨てるのはあまりに惜しいと伝える。芝居しか頭にないと范漣から聞いた愛玉だが、私生活に口出しされて心外だった。曽家には ”子弟を梨園に入れるな” という家訓がある。子供のことから役者が何より嫌いな愛玉は、幼い頃に家族で出かけた時、兄が芝居に見惚れはぐれてしまい、それきり十数年も行方知れずだと明かす。それ以来、銅鑼の音を聞くだけで 憎しみで胸が張り裂けそうになる愛玉。曽家は没落し幸せは崩れた。家族は兄と愛玉しか残っていない。兄が消えた後、母は病に倒れ、その翌年死んだ。そして愛玉が16歳のとき父も帰らぬ人になった。

君、花海棠の紅にあらず 第32話
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話を聞いて今にも泣きだしそうな細蕊は、もしも愛玉の兄が役者を続けたいと言ったらどうするか問いかける。怒鳴りつけて兄弟の縁を切り、会わなかったことにすると一喝する愛玉。沈痛な面持ちの細蕊を見て、ただの冗談だと和ませる。実は丹秋から役者を辞めると言い出した。上海は華やかに見えるが、少しの過ちで足を踏み外す。そんな街にいるより故郷で暮らすことを望んだという。

細蕊が愛玉の首飾りを褒める。その玉は曽家の家宝だ。兄と遊んでるときに割ってしまった愛玉。曽家の運が断たれることがないよう、祖母はお守りとして割れた玉を兄妹に与えた。しかし、離別と流浪の苦しみを兄が味わうことになり心を痛めている。丹秋はその玉を無くしたと愛玉に告げていた。

曽家に興味を示す細蕊に疑問を抱く愛玉。ただの好奇心だとごまかし、鳳尾の名前が鳳乙に変わったと教える。愛玉は育ててくれている鳳台に改めて感謝を示す。子供を案じる愛玉に、水雲楼で面倒を見てるいると知らせる。

雨の中、傘もささずに歩を進める細蕊。屋敷で帰りを待つを待つ鳳台は落ち着かない。屋敷に戻った細蕊が、曽愛玉は実の妹だと打ち明ける。首輪を見せ、愛玉の玉と合わさりそうか見てきたと伝える。細蕊のは鳳凰の頭で、愛玉のは尾だ。

それが事実なら、鳳乙は細蕊の実の姪になる。では林丹秋は?細蕊に兄や弟がいた記憶ない。愛玉はなぜ丹秋を兄だと思ったのか?細蕊は鳳台に確認を頼む。曽愛玉は丹秋の借金を六兄貴という高利貸しに返している。家族のためなら命をかけても惜しくないと愛玉が言ってたのを思い出した鳳台。愛玉が子供と引き換えに金を求めたのは丹秋の借金を返すためだった。朝一番に警察の友人に聞くという鳳台に受話器を渡す細蕊。最近昔の夢ばかり見て落ち着かない細蕊は、明日まで待てないのだ。

君、花海棠の紅にあらず 第32話

YuZheng

翌日、居場所を教えてもらった2人は六兄貴を尾行するが路地裏に撒かれてしまう。鳳台は余裕の笑みを浮かべながら細蕊の後ろへ回る。細蕊が4人を相手にするが、六兄貴に棒で顔を殴られてしまう。怒った鳳台は銃を取り出し、六兄貴の額に当てる。観念した六兄貴は林丹秋のことを話し出す。丹秋は賭博好きで六兄貴から借金をした。曽愛玉を知ったのは2年前。一目で良家の娘だと分かり手下を近づけると、生き別れの兄を探しているという。丹秋と愛玉は一晩話し合い、兄妹と認めあった。愛玉は返済分は実家で用立てできるから、戻ってくるまで兄に手を出すなと忠告したという。借金の額は数年分の利子が積もって10万元ほどだった。

憤慨した細蕊は、林丹秋を殺して自分が兄だと明かすつもりだ。鳳台は、愛玉のこの2年間の想いや時間が無駄だったと伝える気かと引き留めるが、細蕊は聞き入れず駅へ向かう。

走って割り込む細蕊を駅員が取り押さえる。それに気づいた丹秋が知人が見送りに来たと制する。細蕊は愛玉を気遣い、話があると丹秋をトイレへ連れていく。ドアを閉めるやいなや丹秋に暴行を加える。助けを求める丹秋に、悪事を犯したと首輪を投げつける。玉に見覚えがある丹秋は、細蕊の立場を理解する。借金があまりに多くて逆らえなかったと言い訳をする丹秋に、殴ったのは妹を騙したからだと愛玉の2年間の苦労を聞かせる。家を売って工面したと信じていた丹秋は、まさか金持ちの子供を産んだ手切れ金だとは思いもよらなかった。子供は水雲楼にいて、程鳳台が10万元を払ったと聞いて泣き出す。騙すつもりはなかった丹秋。幼い頃のことは覚えておらず、師匠いわく丹秋は文人の家の子で長男だった。愛玉から聞いた話も全く同じだった。だから愛玉を妹だと信じた。妹が自分を覚えていて、家族ができて胸が温かくなったと細蕊に訴えかける。

第33話~第36話のあらすじ・ネタバレ

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