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君、花海棠の紅にあらず|第37話・38話・39話・40話のあらすじ

『君、花海棠の紅にあらず』のあらすじ・ネタバレ第37話~第40話(全49話)

こちらの記事では第37話~第40話のあらすじとネタバレをまとめています。ネタバレを見るには をタップしてください😃

あらすじ第33話~第36話を見る

第37話 命懸けの抵抗

日本兵と衝突した商細蕊に謝罪する雪之誠。戦争を嫌い軍人になりきれない雪之誠は兄から罵られていた。侯玉魁は再び舞台に立つが、台詞を変え日本軍への抵抗を示す。気づいた日本兵は侯玉魁の息子に危害を加え、劇場内が騒然となる中、侯玉魁は吐血する。後日、日本軍の坂田大佐と共に観劇する程鳳台を見た商細蕊は驚きを隠せず…。


雪之誠が辞めろ!と叫び、兵を撤退させる。姜栄寿はすでに署名した。そして押印を押す。登宝は泣きながら栄寿の指についた朱肉をふき取る。

商細蕊の個室に杜洛城と雪之誠がやって来る。洛城は父の件で雪之誠に助けられていた。だから恩返しに連れてきたという。雪之誠の兄は軍の出世頭だが、雪之誠は戦いや殺りくが嫌いで兄に軟弱だと殴られたばかりだ。細蕊は助けてもらったお礼を言うが、軍の行いはひどいと物申す。先生方が侮辱されだけでなく、小来を殺した者はいまだ見つからない。雪之誠は代わりにお詫びし、酒をあおる。

「武家坡」が始まる。侯先生の歌を聴いたそれぞれの感想。侯玉魁は捨て身になったようだと姜栄寿。これぞ全盛期の侯玉魁だと称する細蕊。雪之誠は声に殺気が感じられ、生死にかかわる一幕のような気がするという。鳳台はむしろ男気を感じるそう。鳳台の言う通りで、侯玉魁は若い頃、男気を出して仲間のために人を殺めた。幸い知人に高官がいて1年牢に入ったが、義侠心があると逆に人気がでた。

すると銃声が2発鳴り響き、兵が侯先生に命令する。侯玉魁の息子も従うよう懇願する。歌いだす侯先生。しかし途中で台詞を変えて歌う。面倒なことになりそうだと杜洛城が漏らす。異変に気付いた兵が、息子の頭に銃を当てて脅しをかける。

君、花海棠の紅にあらず 第37話
出典:https://winter-begonia.com

歌い続ける侯先生。息子が足を撃たれる。息をひそめる観客。舞台上で侯先生が血を吐いて倒れる。一同騒然となり、姜栄寿は涙を流す。昔、西太后が侯玉魁は剛毅な性格だから短命だろうと仰ったが、その通りになってしまった。あと少しだったのに、なぜ堪えきれなかったと泣く。

脈をみる医者。長年アヘンを吸ってるせいで体が弱っており、そこへ頭に血が上り昏睡状態になったという見立て。薬で様子を見るしかなく、先は長くない。息子の嘆き声が部屋の外まで聞こえる。

水雲楼に戻った商座長は、侯先生だけを矢面に立たせられないので、公演をしたいと鳳台に伝える。

商先生への大声援が劇楼を包む。隆春班も雲喜班も公演しているが、商先生の芝居は満席で、2時間足らずで売り切れた。兵が現れ、支配人を呼ぶ。范漣が個室へ案内する。特等席だと勧められた兵士が足を踏み入れると床が抜ける。商座長が先ほど床板に細工していたのはこれだった。病院に運ばれる兵士。商座長は日本兵に口出しさせたくない。漣は大胆だなと面白がる。

姜栄寿が坂田大佐を訪ね、正月公演の演目表を渡す。目を通す大佐は姜栄寿に京劇の演目を説明させる。
最初の出し物は「打桜桃だおうとう」。好いた者同士が結ばれる。2つ目は「汾河湾ふんがわん」。親が誤って息子を殺してしまう話。その次は「戦金山せんきんざん」。梁紅玉が金との戦いを鼓舞する。トリで水雲楼が演じると聞いた大佐は、程鳳台が出資している水雲楼かと確認する。座長は商細蕊だと聞き、商細蕊と程鳳台かと呟く。

妹の察察児と食事から戻った鳳台。家の前に日本兵が並んでおり、韓総監が将校が来ていると伝える。察察児を部屋に戻し、客間へ向かう。坂田大佐が正式な挨拶がまだだったと自己紹介する。九条優馬少佐の部下である坂田英吉大佐。北平での主な任務は治安維持で、それには各方面の協力が必要だ。鳳台は商業界の名士で曹司令官の親戚だから挨拶に来たという。鳳台に、商会の鄭会長を牢に入れたことを仄めかす。大佐は程家の内情を握っているだけでなく、水雲楼に投資していることも知っている。大佐は梨園会館で商先生の公演に連れていくよう頼み、香炉を譲り受ける。

いつもなら公演前に掛け声があるものだが今日は無い。兵士が押しかけて来て、壁の向こうで包囲していると知らせが入る。嫌がらせなら舞台裏に来るはずだが、芝居が始まってから騒がれると困る。相手の目的が分からず不安が拭えない鈕さんは、「戦金山」を観たら誤解が生じるかもしれないと、別の武将物に変えるよう提案する。しかし、衣装や道具の準備をするのに間に合わない。そこへ小周子が、軍人の隣にいるのは二旦那だと知らせる。

観劇しながら探りを入れる坂田大佐。鳳台と商先生は無二の友だ聞いたと切り出す。鳳台は京劇は分からず、投資しているのは商先生が”金のなる木”だからとごまかす。坂田家は代々九条一族の家臣で、英吉は9代目だ。本来物資の輸送は大佐の仕事ではないが、東北にいる九条少佐のために物資を届けたいという。しかし、東北への道は地理的に非常に難しく、そのうえ匪賊や中国軍もいる。さらに鉄道も危険で頭を抱えている。そこで鳳台が作り上げた道を使いたいと助けを求める。
舞台では商座長が~陣中で殺せと声が響く~と歌っている。それを聴いた小周子は、日本人を意識して歌っているような気がすると心配する。

大佐は雇人を行かせるので護衛の兵をつけてほしいという鳳台の提案を退け、鳳台に同行するよう求める。厳しい道のりで鳳台が同行するのは無理だと伝えると、それは逃げ口上だと吐き捨てる。

商座長が歌う。~私 梁紅玉りょうこうぎょくは 夫と共に金と戦うため 金山で太鼓を打ち鳴らし 味方を鼓舞しよう 女子の兵よ 金山に向かいましょう~
今日の芝居には裏の意味があるのでは?と客が囁く。日本兵の前でこれをやるとは、商先生は聞かせるつもりか?という会話を聞いた坂田。兵に合図すると、兵が客席を取り囲み、銃を構える。商座長は芝居を続けている。10月からこの地では北方の遼と戦う演目は禁じられていた。商座長は日本軍への抵抗をあおっていると坂田が言う。商座長は危険人物だとみなされた。

鳳台は大佐の指示に従うことにする。大佐は、程家には危害を加えないことを曹司令官と約束したと伝えると、立ち上がって商座長に拍手を送り、会場を出ていく。

血相を変えた鳳台が楽屋のドアを蹴り開け、演目はだれが決めたと怒鳴り込む。激怒する鳳台に、八つ当たりに来たのかと商座長が答える。禁じられた異国人との闘いをわざと歌った商座長に、自ら標的になる単細胞め!と怒りを露わにする鳳台。何様のつもりだと殴りかかる商座長。座員たちが商座長を制する中、杜洛城が大事な話があると鳳台を外に連れていく。細蕊は親しい人にこそ無礼で子犬みたいに吠えると鳳台を宥める。事の成り行きを最初から見ていた杜洛城。大佐は洛城の父に仕官を迫っていたと明かす。お茶に誘う鳳台を断り、頼みごとをする。細蕊さんに渡したいものがあったが2人になる機会がなかったと ”梨園春鑑” を鳳台に渡す。帰ってから読むよう言いつけ、いつ渡すかは自分で決めるよう任せる。

君、花海棠の紅にあらず 第38話
出典:https://winter-begonia.com

第38話 入り混じる真偽

程鳳台は古大犁と協力し、日本軍の荷を輸送するために坂田大佐と交渉する。街では商細蕊と日本人女性との関係をでっち上げた偽りの記事が出回る。そんな中、商細蕊の義兄が水雲楼を訪れる。日本人女性との記事を見た義兄は商細蕊に激怒し、縁談を強要。一方、姜登宝は日本の着物を着た商細蕊の写真を入手していた。


商細蕊は遼の演目が禁止になったことを知らなかった。鈕白分が昨日出たお触れだと教える。軍閥時代も主導者らはさまざまな演目を禁じたが、役者がそれを演じても非難することもなく、お触れ自体が風化していった。しかし、昨日布告されたのは偶然だろうか?

昨日、梨園会館で起きたことについて噂が飛び交っているが、鳳台が気に留めるのは武器を持つ者の動向だ。日本兵以外には曹貴修がいる。今や中央政府に属するとは名ばかりで、軍を率いて境界地域で自由にしている。今は選択肢がないので、鳳台は従うつもりだ。
坂田大佐に輸送路を使って物資を運ぶよう頼まれた鳳台は、ある計画を漣に伝えた。今はグーダーリーの返事待ちの状態だ。策がばれたら大ごとだが、曹司令官の手前、容易に鳳台に手は出せないだろう。鳳台は覚悟しているが、湘児を案じる。

部屋に戻り、”梨園春鑑” の記事を読む。 
”商細蕊 料亭での情事”
”程鳳台と商細蕊の物語”

商座長を鳳台が尋ね、”梨園春鑑” を見せる。字は読めないと言う細蕊に、小百合とは誰か問いただす。雪之誠と食事した日、日本人の酌婦がいたが、細蕊は名前すら知らなかった。事情を理解した細蕊は、低俗な記事だと批判する。記事を読み上げる鳳台。床へ入り交じり合ったという内容に耐え切れず、下品にも程があり、人名以外はすべて嘘だと声を荒げる。続いて鳳台の記事を読み上げる。金のためなら何でもやるクズという書かれようだ。
記事には真実も含まれている。身内しか知り得ない情報があり、上海での会食の描写は実情に近い。同席した杜洛城と雪之誠以外で、あの日のことを知る者は多くいるが、誰も上海には帯同していない。細蕊は邱記者の友人かと呟くが、何でもないともみ消す。
鳳台は役者は気楽だと思っていたが、この件で分かった。役者はいい玩具だと。人々が芝居に払う6元のうち、3元は役者を噂の種にすることへの代価ともいえる。細蕊も頷く。以前、寧先生も醜聞を書かれ、斉王が記者を牢に入れたが、それでも信じる者はいた。役者が低俗だと言われるのは、全部嘘のせいだと細蕊が弁解する。役者は世間に顔が割れてるので何も出来ない。文句を言えば居丈高と言われ、人気は落ちる。普段から稽古しか頭にない細蕊は、女遊びなどするかと ”梨園春鑑” を投げつける。
 
坂田大佐と会う鳳台。まだ出発していない鳳台に、約束を反故にする気かと大佐が迫る。鳳台は釈明するが、坂田大佐の疑念は晴れない。そこで鳳台は家族内の苦労話を聞かせる。報酬を増やせということかと尋ねる坂田大佐に、鳳台は率直に伝える。日本軍の武器を運ぶような真似をすれば国賊と見られる。もし協力すれば家族は危険な境遇に立たされる。役目を終えたら外国に移住するつもりだが、一から足場を築くには金がかかる。
これを聞いた坂田大佐は脅しをかけるが、鳳台は屈しない。九条少佐と義兄は友だから手を下すことは出来ない。それに法外な額ではないと持ちかける。坂田大佐は、商人としての鳳台は誰よりも優れた才能を持っていると褒める。しかし、軍人の視点からすると役者とつるんで、隠し子までいると批判する。

翌朝、小周子の稽古を再開すると、鈕白分が義兄を連れて来た。しばらく様子を見ていた義兄は師匠らしくなったと細蕊を褒める。梨園一の役者になり貫禄が出てきたと伝えると、話もそこそこに手合わせしようと願い出る。義兄は商家の棍法は進化を遂げているか、細蕊は義兄の形意拳けいいけんを見るため手合わせを始める。

細蕊は武器(棒)を使うので9つの形しか使わないことにする。先攻の兄が優勢だ。様子を見にきた鳳台に、細蕊の相手をしているのは形意拳の使い手で商家の長男だと鈕白分が教える。細蕊が使っている棍法の形は本来36通りだが、今使っている9つの形は舞台で使うものだ。それ以外は正真正銘の武術で、戦うとき以外は使わない秘技だ。義兄は役者を目指しておらず、武術を極めた。素手でも細蕊と互角に戦う義兄は、舞台の形以外も使うよう促す。鳳台は商座長がケガをすると心配するが、商家は武劇を生業にしていたから度を超すことはない。細蕊は降参するが、義兄は禁じ手を使ってしまい、負けたことを認める。

勝負がつき部屋へ戻ると、義兄は細蕊の足を蹴って跪かせ、手を挙げる。鳳台が止めに入り、ケガは困ると話し合いを求める。”梨園春鑑” を投げ捨てる義兄に、その記事はでたらめで、友人と食事をしただけと釈明する。記事には虚偽の内容が含まれていると鳳台も弁護するが、義兄はすでに決めていた。韓家の娘と結婚しろと持ちかける。小来がいると言って断る細蕊を殴る。間に入って止めた鳳台も殴られる。出資者として看板役者を守りたい鳳台は、義兄1人を残し出ていく。

商細蕊の会食の時の写真を見る姜栄寿。息子の登宝が新聞社で働く友人から入手したものだ。姜栄寿は細蕊を気骨のある人だと一目置き始めただけに、この記事にがっかりする。登宝はこれを利用して細蕊を追い込みたいようだが、姜栄寿は関わらないようくぎを刺す。そこに侯玉魁が危篤だと知らせが入る。

趙飛燕を演じた商細蕊の舞台は大盛況に終わった。楽屋へ戻ると、そこには暗い顔をした鳳台と座員たちがいる。何事かと案じる商座長に、侯先生が永眠したと伝える。

侯家に姜栄寿と登宝の姿があった。鈕白分が線香をお供えしてお悔みを伝える。一昨日、侯先生の手を握って寧先生の話をしていた鈕白分はまだ信じられない様子だ。日本軍は偽装死を疑い、陸軍医院で死亡を確認した後、骸を返してきたという。それで姜栄寿が同業者たちに連絡したのだ。しかし、侯先生は名優なのに弔問に来る人が少ない。鈕さんは栄誉を得た侯先生が寂しい最期を迎えることにひどく胸を痛める。

扁額をきれいに拭く商座長。梨園一になった時、寧先生にいただいたものだ。扁額を持って侯家を訪ねる。名優は盛大に見送られるべきだ。細蕊は ”最高峰” という言葉で侯先生を送り出したかった。商菊貞や寧九郎、侯玉魁のような役者が梨園の傑士と呼ばれるにふさわしい。

線香をあげる商座長に姜栄寿が声をかける。日本軍が戯曲同好会を作ることになったが、会長候補だった寧九郎と侯玉魁が申し出を断ったせいで、次の候補者は断ることができなくなったという。細蕊は事情を察し、北平梨園の会長である姜栄寿以外に適任はいないと告げるが、高齢で体力がないからと同好会の会長を依頼されてしまう。引き受けてくれれば旧怨はすべて水に流すという。相変わらず腹黒い姜栄寿を後にする細蕊。

君、花海棠の紅にあらず 第38話

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姜栄寿が梨園の危機的な状況を訴える。1か月足らずで北平を離れる一座が続出し、皆をまとめる頭なしでは梨園は崩壊してしまう。同業者への情がないのかと気弱に言う栄寿に、情はあるが、栄寿に対してはないと言い放つ。息子の登宝は、梨園一の称号を得て偉そうだと細蕊を責めるが、そもそも登宝が梨園一になれば、栄寿がこんな仕打ちを受けることはなかった。そう責められた登宝は細蕊に恨みを募らせる。

第39話 苦悶

日本の着物をまとう商細蕊の写真は、日本軍の命令により日中友好の宣伝材料として新聞に載ることに。程鳳台は憤り、杜洛城と口論になる。上演中、舞台荒らしが野次を飛ばし、商細蕊は舞台から引きずり下ろされる。腕力では負けない商細蕊だったが精神的なダメージは大きかった。一方、日本の荷を輸送中の程鳳台一行は匪賊に狙われる。


写真を見る北平時報の薛社長。この写真を他に見た者はいないと部下が伝える。薛社長が思案していると、着物姿の妻がそこに現れる。

荷物の準備を終えた范漣に、グーダーリーの根城で鳳台を待つ段取りだと伝える。そこに薛社長から電話が入る。会って話がしたいという。
薛社長が写真を見せる。先ほど匿名で届いたものだ。日本側は日中友好の宣伝材料と捉え、掲載するよう迫った。薛社長に拒否することはできず、先に鳳台に知らせたのだ。商先生と対策を練るよう託す。

会食時に和服を着て日本の舞を見せたのは、ただ友と芸に興じただけと答える商座長。鳳台は北平時報に匿名で送られてきた写真を見せ、状況を説明する。雪之誠の本名は九条和馬といい、日本軍の九条少佐の弟だ。写真は ”梨園一の名優が親日” という見出しで明日の一面に載る。細蕊は雪之誠の兄が誰かなど関係なく、和服を着たら親日なのかと不思議がるが、今の雪之誠が軍人なら世間はそう思わない。しかし、細蕊は意味不明だと写真を投げ捨てる。

杜洛城を呼び出した鳳台と細蕊。ただならぬ雰囲気に身構える洛城。雪之誠の正体を知っていたのか細蕊が尋ねる。洛城が白状する。雪之誠の正体を隠す気はなかった。確かに雪之誠は九条家の子だが、本当に敵国の軍人なら戦時中に付き合うはずがない。雪之誠は4歳の頃おじ夫婦に連れられて欧州へ行き、本家との交流はなかった。しかし、開戦に伴い強制的に召集を受けた。本人は嫌がり、兄に殴られても出征を拒否している。そんな雪之誠と友であっても何もやましいことはないと洛城は考えている。
これを聞いた鳳台は、洛城は愚か者だと呆れる。商座長の人気ではあらぬ噂も立つというのに、今回の事実交じりの嘘を払拭できるとは思えない。戦時中に日本と関わりがある以上、誰も裏の事情など信じる気はないだろう。噂は放置すれば冷めるから気にするなと洛城は言うが、日本軍が撤退するまでは無理だろう。細蕊はその場を収めようとするが、鳳台の怒りは収まらず、洛城に殴りかかろうとする。

聞く耳を持たない鳳台に腹を立てる洛城。外に出てきた洛城に、細蕊の義兄が声をかける。あの道理はたとえ正しくても洛城が言うべきではないと伝える。誰が言おうと同じことだと洛城は思うが、洛城は名門の出だ。幼いころから有名な才子で世論など気にしないだろう。しかし細蕊は観客頼みだ。観客に好かれている間はいいが、人気が落ちれば閑古鳥だ。名声を博した阮玲玉ろあんりんゆいも噂が元で命を絶った。それに今回は並みの噂ではない。洛城は思慮不足だったと悔いるが、細蕊にはただの人気役者で終わってほしくない。後世に名を残すには逆境を跳ね返す気概がいると訴える。細蕊は名を残したがってはいないと義兄が反論する。

水雲楼で稽古している所へ劉漢雲の秘書・王さんが訪ねて来る。”梨園春鑑” を取り出し、噂について切り出す。この本が出た途端、劉委員に電話が殺到し、激怒しているそうだ。和服を着ても構わないが、軍人との同席が問題だと告げる。梨園春鑑と北平時報に親日を報じられ、弁解の余地がない。劉委員の義子が投降したという話になれば、劉委員にとっては耐え難い不名誉だ。そこで南京に来て身を隠し、劉委員の名誉を守れと持ちかける。舞台に命を懸けている細蕊にとって、北平を離れることは役者人生の終わりに繋がる。私を脅す前に国を取り返せと吐き捨てる。

義兄に話を聞かせる細蕊。義兄は重荷を背負わせ、苦労させたことを詫びる。最悪の場合は手紙を書いて劉委員と父子の関係を断つと考えている細蕊。話題を切り上げ、義兄が北平に来た理由を尋ねる。義兄はためらいながら金の無心をする。細蕊は快諾する。困ってるなら話してくれと笑顔を見せる。義兄はもう少ししたら必ず話すと約束する。

祖師様に祈りを捧げる水雲楼一同。三拝して線香をお供えする。今回はなぜか火傷する商座長に不吉な予感がする十九。

君、花海棠の紅にあらず 第39話

YuZheng

幕が上がる。
舞台歌から観客を見る大聖は、違和感がしてならないようだ。2卓の客たちは観劇してるようには見えないという。大聖の予感は的中し、舞台荒らしが写真をばらまいて騒ぎ出す。商細蕊が日本の服を着て日本の舞を踊ったと罵る。細蕊が歌う。~私 蘇三が 濡れ衣を着せられようとは 思いもよらなかった~ すると、無実を歌う気かと舞台から引きずり降される。頭を打った細蕊は耳に違和感を覚える。

絡子嶺に荷物を運ぶ鳳台一行。匪賊が現れ、日本軍に緊張が走る。鳳台はここの匪賊には十分な額を収めている。口笛で合図して匪賊を追い払う。身のこなしが早い匪賊に、戦えば不利になると警戒する日本軍。軍人が記録する。坂田大佐から命じられ、地理や土地柄に加え、鳳台の行動も含めてすべて記録するという。職務だと理解を示す鳳台が歩を進めると匪賊に襲われる。

細蕊のケガの手当をする義兄。顔は守れと叱りつける。小周子がすね肉を買ってきたが、新聞は忘れたという。声を荒げる細蕊に、師匠失格だと癇癪を抑えるよう諭す義兄。
熱いお湯を小周子に頼むが、火が消えてすっかり冷めている。小来が死んで湯も飲めなくなったと細蕊が呟く。沸かしに行った小周子を義兄が追う。小周子は新聞を買っていた。義兄は絶対に見せるなと言いつけて燃やす。

床に臥せる細蕊に、洛城が荒々しく声をかけて新聞を読む。”奇なるかな 商細蕊 愛好者を殴る” ”恥ずかしさと恨めしさで激高” 
細蕊が愛好者の詰問に答えられず、怒りのあまり暴行を加えたと記事にある。”熱心な愛好家たちは 商氏の人に言えぬ秘密を劇場で暴露し 被害にあったものである” と北平時報を読み上げる。傷心している細蕊に構わず洛城は批判し続け、細蕊は吐いてしまう。洛城が新聞を持っているのに気付いた小周子は外へ連れ出す。

師匠は癇癪は起こしても恩人である客には手を挙げないと小周子が弁明する。洛城は軽率だったと反省する。小周子は、親友の洛城まで噂に惑わされては、師匠は孤独になってしまうと失礼を承知で忠告する。洛城は誤解を認め、許してくれと細蕊に声をかける。

細蕊は吐き気が収まらないが、無理を押して電話をかけに行く。細蕊に代わり小周子がダイヤルを回す。あいにく范漣は不在らしい。細蕊は小周子に10分ごとにかけるよう指示する。電話が鳴り続ける程家では、美心の指示で受話器をはずしてしまう。商細蕊からの電話は繋がらなくなる。

匪賊に捕らえられた鳳台一行。あの道は安全だと言った鳳台に、日本軍が詰め寄る。相手は匪賊だから確実なことは言えない。今は素性がばれないよう用心するしかないと言い聞かせる。日本軍は匪賊を買収したいようだ。方法を考えていると匪賊が来て、鳳台を殴って連れて行く。

手荒い部下だとグーダーリーに不満を漏らす鳳台。手加減などしたら騙せないとグーダーリーが言い訳する。鳳台は食事を頼み、あと数日したら程家に身代金を要求するよう指示する。坂田大佐に払わせるよう美心に迫り、日本軍が鳳台を拉致したことを義兄に知らせ、激しく抗議させるつもりだ。そこに曹貴修が現れ、今夜すぐに出発するよう鳳台に言いつける。 

曹貴修 は1日でも早く日本軍に荷物を届けろと言う。拒否する鳳台に内情を明かす。坂田が荷を運ばせる真の理由は、鳳台が信用できる人物かを試しているだけ。荷を奪われても輸送路が1本減るだけで、大した損害にはならない。疑心を抱く鳳台に、父の曹司令官が情報をくれたと耳打ちする。

第40話 針の筵(むしろ)

曹貴修は荷を輸送させる日本軍の真の目的を語り、程鳳台と手を組もうとする。一方、外出した商細蕊は食堂で詰問され、道中で噂話を耳にしてしまう。杜洛城は自分が水雲楼を養うという条件で休演を提案するが、商細蕊は罪を認めるような行為はしないと拒む。そんな中、耳に問題を抱えたまま復帰した商細蕊は、舞台上でぼう然となり…。


曹司令官がくれた情報を鳳台に伝える。日本軍は大事な物資を東北に送る。その際、九条少将も同行するらしい。九条は早くて安全な鉄道ではなく、なぜか鳳台の騎馬隊を選んだ。誰にも知られてはならない物資だからだろう。そこで貴修は留仙洞に目を付けた。留仙洞を通れば匪賊を避けられ、今より早く楽に荷を運べる。しかし、鳳台は誰かに使わせるくらいなら爆破すると拒否。その言葉を待っていた貴修。九条が秘密の荷を運ぶときに爆破すれば、日本軍も破滅できる。用意周到な貴修は、整備を終わらせるため助っ人を派遣してあるという。敵を熟知した貴修は、九条はあの経路を選ぶと保証する。

寝込む商座長に小周子が薬を運ぶ。商座長は耳鳴りがしてるのに異常なしと言った医者を信用していない。どうせ効かないからと薬を飲まない。原因は心の問題ではないかと小周子は心配している。公演を気にする商座長に、代役を立てられない演目もあり、その時は払い戻しをしていると伝える。実は代役の依頼に行っても門前払いされていた。商座長は回復したら払い戻した演目を必ず公演すると心に誓う。

薄味の食事にうんざりした商座長は炸醤麺を食べに行く。店員は細蕊に冷たい態度だ。商先生に気付いた客が話しかける。北平で初公演をした時から応援してるという客ですら、記事を鵜呑みにしている。説明を求める客たち。細蕊の耳がおかしくなる。細蕊が言う。「今私は崖っぷちにいる。応援してると言うならなぜ信じてくれない。祖国が危うい時に敵国にすり寄ったりするもんか。疑うのなら好きにしてくれ」そう言ってお金を置いて出ていく。

部屋に戻ると安貝勒と杜洛城が待っていた。安貝勒は人から細蕊のことを聞かれるという。細蕊は安貝勒の話を遮り、ここへは来ないでと帰らせる。無礼な奴だと腹を立てる安貝勒に、細蕊は普通じゃない男だと洛城が宥める。

君、花海棠の紅にあらず 第40話
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九官鳥にエサをあげる細蕊に洛城が話しかける。細蕊を応援する愛好家たちへ意見を聞きに行ってきたという。意見を聞きたいか尋ねると、細蕊は耳が聞こえずらいから大声でと頼む。洛城が大声で言う。今の状況を考えたら休演したほうがいいと全員が言っていた。名誉を守るだけでなく身の安全も心配だからだ。細蕊は姜栄寿に面子を潰されて腹を立てた時は休んだ。小来が死んだ時も悲しみで休んだ。それなのに、なぜ今回は休演しないのか?
休めないと呟く細蕊。洛城は雪之誠を紹介した自分が悪いと詫びる。そして、水雲楼を養うと申し出る。細蕊が休めないのは金の問題ではなく、休演したら国を裏切ったという罪を認めることになるからだ。数日後には「鴛鴦おしどり剣」なら演じられそうだという細蕊。必ず観に行くと言う洛城に、世間で商派と言われているから来るなと止めるが、洛城は喜んで派閥の領袖りょうしゅうになる意気込みだ。

公演の日が来た。騒ぎの後にも関わらず、演目の看板を出した途端に売り切れた。立ち見の券まで完売だ。細蕊の潔白を信じるご贔屓筋が応援に駆け付けたのかと思いきや、敵に寝返った細蕊がどんな人間に変わったかを見たいようだ。座長の人生は芝居よりおもしろいからと大聖が言う。音合わせをする商先生。語尾が少し上ずる。まだ万全ではないので舞台では援護するよう奏者に頼む。

芝居が始まった。細蕊を見守る洛城。観客は大喜びだ。問題を抱えてるとは思えない細蕊。しかし、途中で異変が起こる。引き上げる場面なのに立ちすくむ。明らかに様子がおかしい。小周子が助け舟をだし、舞台をはける。

あの症状が出たようだ。十九が商座長を止める。私が分かるかと聞く。師姉だと答える商座長。蒋夢萍が去ったときと同じ様子だ。どの師姉かと頬を叩く十九。商座長は十九師姉だと認識した。

出番だと呼ばれ、舞台に戻ることに。座長は舞台の上で育ったから戻れば治ると気楽に考えていたが、観客に拍手で迎えた細蕊は立ちすくんだまま。耳鳴りが始まり、目を閉じる。

坂田大佐を訪ねる鳳台。絡子嶺から直行したので衣服はホコリまみれで、髪もボサボサだ。坂田大佐は程殿のおかげで多くの情報が得られたと礼を述べ、約束通り10万元の小切手を渡す。そして、我が国への貢献を心に刻んで忘れないと伝える。

君、花海棠の紅にあらず 第40話
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家に戻った鳳台。范湘児は危険な仕事はしないようお願いする。鳳台はぼろ儲けできたと言うが、お金よりも命が大切だ。察察児を呼ぶとプイっと出て行ってしまう。また縁談の話をしたのかと鳳台は案じるが、その話をしたくても察察児は最近家にいない。休日も学校へ出かけて学業に励んでいる。湘児は学問に打ち込めば察察児の婚期が遅れると心配するが、鳳台は察察児が学者になるなら学校を立ててあげるつもりだ。

鳳台の無事を祝って乾杯する一同。湘児がなぜ恋人を連れてこなかったと漣に尋ねる。ここに連れてくるのはまだ早いと言うが、交際は順調らしい。盛家の子晴ズーチンと聞いた鳳台は、真剣に付き合うよう言いつける。察察児が日本軍が家に来たのはなぜかと唐突に尋ねる。その発言にその場が凍り付く。日本軍とは仕事をしていないとごまかす鳳台に誓うよう迫る。美心に叱られた察察児は席を立つ。

本当は日本軍の荷を運んでいたと湘児も気づいている。日本軍とは関係ないと言い張る鳳台に、敵に手を貸すなんて国を売ったのかと問いただす。鳳台は違うからこそ親日の義兄と決別したと言いくるめる。

妓楼を訪ねる鳳台。妓楼の部屋で、洛城が世を震撼させるような台本を書いてやると豪語している。50年後も最高傑作であり続ける演目を書くと言って酒を飲み干す。細蕊は耳が不自由で演じられないと囁く。洛城はそんな細蕊を叱咤する。商先生は耳が不自由になり終わりだと皆が言うが、これは最高の災難だ。天才は神の嫉妬から生まれた存在だから、神が細蕊を苦しめるほど才は高まる。10年前の声変わりが細蕊を梨園一の女役にしたように、今回の受難も崇高な存在にしてくれるはずだと論じる。 
すると、鳳台が入って来て、杜洛城も天才だから神に代わって罰を与えてやるとねじ伏せる。洛城は妓女たちに部屋から連れ出され、難を逃れる。

鳳台が自堕落な生活を送る細蕊を批判し始めると、説教されても聞こえないと細蕊が返す。医者は間欠的な耳鳴りだと言うが、舞台に上がると聞こえなくなる。それは神の意志だと細蕊が言う。陳紉香は正しかった。幼いころから稽古に明け暮れ、苦汁を味わい続けてようやく名優になれても、ずっと人を喜ばせ続けなければならない。役者を辞める時が来たという。鳳台はこれを認める。出資者ではあるが、水雲楼で稼ぎを得ようと思ったことはない。洛城の話が本当だとしたら、鳳台は細蕊に役者をやらせるつもりはない。細蕊が神に苦難を与える番だ。役者以外にも職は多くある。鳳台は細蕊が楽しく生きてくれれば十分なのだ。民衆は細蕊を天性の役者で、舞台に立てれば幸せだと思っている。そして災難も伝説の一部だと好き勝手に言う。鳳台は考えるだけで虫唾が走るという。
黙って聞いていた細蕊が弱々しく言う。ご贔屓筋と知音は違う。それに役者でなければこの出会いもなかった。鳳台は否定する。縁のある相手は天に定められているから、いつかは必ず出会う運命なのだと。

第41話~第44話のあらすじ・ネタバレ

今回の記事でご紹介しているエピソード

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