中国の時代劇を観ていると、誰かが亡くなったとき、紙を燃やしたり撒いたりするシーンがよく登場します。きっと死者の魂を慰めるためかな?と思って観ていましたが、あの紙の名前が分からないので調べてみました。
中国時代劇で燃やしている紙は「紙銭」
紙を銭形に切り取ったものを「冥銭」といいます。または紙銭、冥紙、冥鈔ともいいます。

画像:『如懿伝』第24話
中国時代劇の『如懿伝〜紫禁城に散る宿命の王妃〜』では、冥銭でなく「紙銭」となっています。
紙銭は死後の世界のお金と考えられ、子孫が燃やすことであの世の先祖に送ることができると考えられた。
『岩波仏教辞典』(中村元〔ほか〕編 岩波書店)より
紙銭は、神や祖先を祀る時に使われました。祖霊信仰の一種で、墓前で焚いたり、葬列で撒いたりします。
冥銭の習慣は、あの世でも貨幣が必要だという考えから生まれました。死者のために冥銭を焚けば、死後の世界で通用する貨幣となり、裕福に暮らせると信じられているのです。

古人烧冥钱的绘画
紙銭の由来
埋葬者の棺に貨幣が入れられたのが起源で、司馬遷の『史記』「酷吏列伝」に記録があることから、漢王朝にはすでにこの習慣があったことがわかります。後に紙銭を焚くことが主流になり、唐の時代には庶民にも葬式に紙銭を焚くのが浸透しました。この頃の紙銭がアスターナ古墓群から発掘されています。
紙銭の種類
黄色の紙は黄金、白の紙は銀両を表し、清代のものには、黄色の紙に「泉台上宝」、白い紙には「冥游亚宝」の文字が印刷されていました。
現在の紙銭
冥銭を焚く習慣は、現在でも一部の地域や台湾で続いています。時代を反映して、あの世で使えるクレジットカードもあるようです。
中国時代劇で紙を燃やすシーン
先ほども登場した『如懿伝』に、紙銭と似ている紙を焚いているシーンがありました。

画像:『如懿伝』第25話
黄色の円形の紙に赤い文字で何か書かれています。紙銭のように見えるので、ドラマの中では紙銭だと言いがかりをつけられています。
紙銭を燃やし皇太后を呪っている者がいると、紙を燃やしている現場を押さえます。嫻妃は危うく罰を与えられるところでしたが、その紙は紙銭とは別物で、六字真言が書かれていました。
六字真言とは、
仏教の陀羅尼(呪文)の1つ。サンスクリットの6つの音節からなる観世音菩薩の陀羅尼であり、チベット語で六文字となることから六字真言ともいう。特に、チベット仏教圏のチベットやモンゴルの仏教徒が頻繁に唱える陀羅尼である。
ウィキペディア(Wikipedia)より

Baidu:六字真言
一語一語にそれぞれの罪を浄化する意味を持たせています。
『如懿伝』の中で、嫻妃は六字真言を書写した紙を焚きあげて、皇太后への孝行心を示しました。
長寿と豊かさを願い
卍を組み合わせた文様を添えました
妙応寺の僧が
”最も祟高な呪文だ”と
授けてくださった真言です
罪業を清め心を解き放ちます
『如懿伝第25話より引用
中国時代劇に登場する「紙銭」のまとめ
- 「冥銭」「紙銭」と言う
- あの世で使える貨幣
- 紙銭を焚けば、あの世で裕福に暮らせると信じられている
いかがでしたか?紙銭を焚くのは現在でも行われているんですね。通販サイトなどで手に入れることができますが、現在のものには鉛箔が使用されており、焚くと酸化鉛が発生して人体に危害を加えることがあるようなので、注意が必要です。