『君、花海棠の紅にあらず』のあらすじ第9話~第12話(全49話)
『君、花海棠の紅にあらず』第9話~第12話までのあらすじとネタバレです。ネタバレを見るには をタップしてください。
今回から新たに登場する人物
杜洛城:商細蕊のお抱え戯曲作家
陳紉香:会長·姜栄寿の甥
寧九郎:商細蕊に芸を教えた人物
第9話 梨園の王となれ
トンネル修繕の契約を終えた帰路、程鳳台は平陽へと向かう水雲楼一座と遭遇し、商細蕊の逆境を知る。ついに、水雲楼の後ろ盾になるという大きな助け舟を出す程鳳台。希望が見えた一座だったが、姜栄寿が黙っているはずはなかった。そんな折、商細蕊の芸を愛する戯曲作家の杜洛城が現れるが、程鳳台を見て怒り出す。
程鳳台が雷家の主人に本題を伝える。隧道ならば60年はもつと保証する雷家の主人だが、それでは自分が大損してしまう鳳台は、いつでも倒壊させられるような仕掛けを隧道に作るよう注文する。それならば色をつけてもらうという主人は、金ではなく、義弟という立場の鳳台に曹司令官への口添えを頼む。以前、主人は陛下に太和殿の修繕を命じられたが、着手前に宮廷を追われてしまい、議員や部長たちに訴えたが信じてもらえなかったという。鳳台は義兄に伝えると約束し、修繕の費用も請け負う。
日が落ち、水雲楼一座は平陽へ向かう。隆春班と遭遇したくない商座長は迂回するよう命じる。すると鳳台と出くわす。平陽へ戻るという商細蕊に、事情を知らない鳳台は戸惑う。こんな大切なことを伏せて、なぜ自分を頼らないのかと問う鳳台だが、細蕊はそれが嫌だった。鳳台との付き合いは崇高な”君子の交わり”であり、金が関われば無粋な友になってしまうと懸念した細蕊。”千金で知己に報う”と返す鳳台は、細蕊が范巨卿ならば張元伯が必要だと訴える。鳳台が自分のパトロンになってくれると理解した細蕊。
座員の元へ戻り、水雲楼は北平を去らないと伝える。この地に根を張り、名を轟かせると表明し、程鳳台は水雲楼の出資者だと改めて紹介する。水雲楼の苦難の発端は、鳳台の義兄・曹司令官に発し、資金繰りが難しくなった。鳳台ならば問題を解決できる。水雲楼の舞台を見た鳳台は、梨園の優秀な人材を平陽に埋もれさせては惜しいと、後ろ盾になることにしたのだった。
一夜明け、座員が集まり新聞に目を凝らしている。田先生が舞台で佟部長の陰謀を訴えたとある。これは、水雲楼の座長の話に似ていると座員。田先生が座長で、劉祖寧は姜栄寿のような話が別の劇団でも起こっていた。そこへ水雲楼が北平を離れると耳にした新聞記者が現れる。十九は邱記者に、曹司令官の義弟である鳳台が出資者になり、劇場も立ててくれると口を滑らす。
その頃、姜栄寿は商会の会長・鄭原木に相談を持ち掛けていた。姜栄寿は商細蕊に劇場を持たせたくないのだが、鄭原木は細蕊の演目を好んでいるので困らせたくない。しかし、鳳台が出資者になって土地にも金を出したと聞き、鳳台を知らしめるために姜栄寿と手を組むことにする。
喫茶店で鳳台とお茶する商細蕊は、吉相の地が他人に売れたことを残念がっていた。別の場所を探したが、いい場所が残ってないという。それを聞いた豪商の鳳台は、劇場を買い取ると言い出す。芝居を披露する場所に困らなくなったと安心する細蕊に対し、鳳台は手癖の悪い座員を案じていた。商座長には厳格さと一貫した態度が必要だと説く。旧情と義を重んじる細蕊は、友なら合格だが座長としては失格で、一座に厳しい掟を課すよう促す。しかし、芝居のことで頭が一杯という細蕊に代わり、鳳台が管理を担うことになる。
水雲楼では、座員たちがフランス帰りの杜洛城(七坊)の話に耳を傾けていた。そこへ座長が鳳台を連れて戻ってくる。久々の再会に抱き合って喜ぶ細蕊と洛城。姜栄寿が水雲楼を追い出したと聞いた洛城は、横暴なやり方に腹を立てていた。商細蕊のために抗議の記事を書いたという。そんな洛城に、水雲楼の出資者である程鳳台を紹介する。手を差し出す鳳台にいきなり殴りかかる洛城。スザンナという名を出し、薄情男と鳳台を罵る。実はこの2人は留学先で面識があったのだ。
鳳台を夕食に誘った商細蕊は、改めて感謝を述べ、座員たちにこれからの劇団の方針について話す。帳簿は鳳台が管理するので盗みは絶対に許されないこと、契約の条項に違反したものは役所に捕まり裁かれること、契約は5年で切れたら双方の合意次第、期限前に違約金を払えば辞めてもいいことなどを伝え、全員が承諾し契約書に署名した。
しかしながら、水雲楼の帳簿のいい加減さを知った鳳台は頭を抱えることになる。今まで誰も管理をしておらず、金を使った人が各自記入していたという乱雑ぶり。不安になる鳳台を尻目に、商細蕊は帳簿の管理を終わらせるよう目を光らせる。
雅鴻劇場には観客が殺到していた。その様子を見て、隆春班目当てと勘違いする姜登宝。実際は、支配人が商いを優先し、隆春班の出番を水雲楼に変更していたのだ。支配人を呼ぶ登宝に、隆春班は朝の枠で我慢するよう言いつける。
朝早く范漣を呼び出した鳳台は、水雲楼に出資し、劇場を買うつもりだと打ち明ける。そして芸事を何より嫌っている范湘児には一言も漏らすなと忠告する。劇場の支配人を范漣に持ちかける鳳台に、出資したいと范漣が言い出す。今や商細蕊は映画会社より稼いでいるのであやかりたいのだ。出資すれば自分の事業になるという范漣に、払える分だけ出資することを認める。
曹司令官の息子・貴修が、計画どおり進めるよう孫副官に指示していた。ほどなく程家に馬番頭から電話が入る。曹貴修が旦那の荷物を没収したという知らせだった。湘児が韓さんに伝えると、2人の間に確執はなかったはずだという。
そんなことも知らず、鳳台は劇場にいた。座長の楽屋に入ると、そこには衣装を身に纏った座長がいた。楊貴妃の姿に魅入る鳳台。
落ち着かない湘児の所へ義姉・程美心がやって来る。美心の息子・貴修が鳳台の荷を没収した目的は何かと率直に尋ねる。貴修は自分がやったと鳳台に知らせるよう言ったらしい。鳳台は本分を守り問題は起こしてこなかったのだから、父子の争いに巻き込まないよう訴える湘児。間に立たされた鳳台を曹司令官から守ることを約束させる。
舞台が始まるのを待つ鳳台。そこへ范漣が女性とやって来る。鳳台の気を引こうとする女だが、鳳台は見向きもしない。商細蕊のことを考えていると言う鳳台に、また面倒ごとが起きたのかと范漣が尋ねる。
第9話にでてくる『様式雷』については、こちら↓を参考にしてみてください。
第10話 裏切りのワルツ
程鳳台の義弟·范漣は、遊びで付き合う女性の妊娠を知る。程鳳台は動揺する范漣に代わり話をつけようとするが、彼女から大金を要求される。一方で程鳳台は曹司令官の息子·曹貴修に希少な銃を贈り和解を求める。しかし曹司令官の裏切り疑惑が浮上するのだった。そんな折、芸能を嫌う程鳳台の妻·范湘児は夫の水雲楼への投資を知り…。
開演前、商細蕊のことを考えていた程鳳台。普段の商細蕊は女役らしい雰囲気は全く無いが、舞台では女性そのものだ。本番前に黙想している細蕊を邪魔して部屋から追い出された鳳台に、今後は舞台裏は見ないほうがいいと范漣が忠告する。理由を尋ねる鳳台に、美しい世界とは程遠いからと言う范漣は、役者の修行の過酷さを聞かせる。
程家では、美心が曹貴修との出会いを振り返っていた。若かりし頃の美心は、男性の憧れの的だった。司令官の息子・曹貴修もその中の一人で、ある日、貴修がダンスに誘った。しかし、貴修は美心の足を踏んでしまう。海外帰りのわりにダンスが得意ではない貴修は、美心からダンスを習おうと願い出る。次第に2人の距離が縮まる。
その後、戦場で手柄をあげた貴修。褒美に金が欲しいと答える貴修に、50万元を渡す曹司令官。そこへ美心が現れ、六夫人だと紹介される。こんなかたちを望んでいなかった貴修は、司令官の前でお金を破り捨てる。
美心が父を選んだことを知った貴修は、曹万釣のどこがいいのかと問いただす。事情があって貴修の昇進を待てなかった美心は、勢いのある権力者だからと答えた。
現実に戻った美心は、どこかへ電話する。
楊貴妃の舞台を観劇している鳳台は、商細蕊が一番の役者で、女役で彼に勝る者はいないと思っている。だが、北平には陳紉香という女役の名手がいて、その歌声は商細蕊にも負けず劣らずだと范漣が教える。陳紉香は姜会長の甥で、休む暇なく行脚させられている。会長の甥でもそんなに大変なのかと心配する鳳台に、役者業の過酷さを范漣が聞かせていると、曽愛玉が倒れてしまう。
病院へ連れていくと、妊娠4か月と判明。子供を産めるか分からないと含みを持たせる愛玉に、子供を産みたいなら范漣に償わせるから条件を出して構わないと鳳台が申し出る。愛玉は范家に入ることを狙っていたが、鳳台が容認しないと判断した愛玉は、鳳台に10万元を要求する。性別問わず出産したら子供は渡すという。鳳台は范漣に愛玉から10万元を要求されたと伝える。子供はいらないと言い出す范漣は、そんな大金はないと鳳台に泣きつく。
程家へ戻った鳳台は、曹貴修に荷を狙われたと美心に明かす。美心は今まで見過ごしてきたが、今回はやり過ぎだ。父子の争いに鳳台は関係ないのだが、曹貴修は気象が荒く、怒ったら荷を廃棄しかねないと忠告する。父子が仲直りした時、鳳台が損すると指摘し、美心が話をつけると引き受ける。
鳳台は病院へ。決心したか尋ねると、愛玉は泣き始める。家族が大変な目に遭ってお金が必要になり、10万元あれば助けられると言う。どうしても家族を助けたいと願い出る愛玉に、鳳台は10万元払うと約束する。救いの手を伸べるのは鳳台にも家族がいるからで、愛玉の話が嘘だとしても騙された自分が悪いと退室する鳳台。
ダンスホールで踊る程美心と司令官の息子・曹貴修。弟の荷を解放するよう美心が切り出す。荷は司令官のものだから、事実を知ったら造反だと疑われると伝える。司令官に電話すれば事は解決するが、美心はそうしない。これまで物事を損得勘定で決めていた美心に、先見の明がないと貴修が忠告する。貴修は曹家の一人息子で、いずれ司令官のもつ財や権力は自分のものになると言う。しかし、貴修が唯一の息子だとは決まっていないと美心がくぎを刺す。
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話がひと段落ついた頃合いを見て、鳳台が挨拶にくる。ここへ来たのは、武器を愛する貴修に銃を贈るためだった。銃を取り上げると、10万元が入っていた。
荷を運び出すことを許可した貴修は、曹司令官が日本軍と接触していると漏らす。曹司令官が軍で使うと信じて銃や弾薬を運んできた鳳台は、貴修の話が事実なら、自分は敵に手を貸した罪人だと懸念する。
程家に范湘児の四義姉が訪ねてくる。鳳台が水雲楼に出資したと知り、娘を商細蕊の楽屋へ訪問させてくれないか、口をきいてくれるようお願いに来たのだ。出資の話を初めてきいた湘児は、誰に聞いたのかと尋ねる。程鳳台が范漣と出資したと新聞に載っていた教えるが、湘児の様子を見て、口を滑らせたと気づき帰っていく。湘児に隠していたことが露見してしまう。
劇場では、水雲楼の主になった程鳳台と范漣が客に祝福されていた。范漣の手には新聞が握られ、誰かが情報を漏らしたことが露わになる。個室へ行くと湘児の姿が。范漣は湘児をなだめ、隠す気はなかったと必死にご機嫌をとる。
今日の演目は”宛城の戦い”だと范漣が教える。商細蕊の演技を見て、美しいと褒める湘児。女よりも女らしいという言葉は本心のようだ。しかし、舞台が進むにつれ粗探しが始まり、細蕊の演技はまともではないと言い出す。
第11話 侮辱
水雲楼の役者が夫を狙っていると知り、いらだちが収まらない范湘児。そんな中、火に油を注ぐ出来事が起こる。憤る范湘児は商細蕊を呼びつけ、蔑みの言葉を投げつけるのだった。一方、姜栄寿は商細蕊を失脚させるために、甥の陳紉香を地方から呼び戻す。1年の休演と“丸刈り”を賭けて、商細蕊と陳紉香の対決が始まる。
商細蕊の演技に不快感を露わにする范湘児と春杏。本人が低俗で資質があるから演じられると春杏が言う。口を慎めと叱られた春杏は、座員が湘児の陰口を叩いていたことを聞かせる。
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腹を立てた湘児が席を立つ。まだ一幕残ってると范漣が止めるが、水雲楼の舞台は十分だと心付けの簪を渡し、商細蕊への伝言を頼んで帰ってしまう。
程家で食事をとる湘児は、程美心に素っ気ない態度。美心は、鳳台と范漣の出資を知った様子の湘児のご機嫌を取り、曹貴修の件が片付いたら教えようとしていたと言い訳する。義妹・察察児の姿がないので春杏に聞くと裏庭へ行ったと言う。裏庭では、察察児と臘月紅が会っていた。臘月紅がご飯代のお礼を渡しに来たのだが、赤の他人からはものを受け取らないと拒否する察察児。人には施すものだと義姉が言っていたと返すが、臘月紅も人に貸しを作るなと座長から言われていると、頑として受け取らない。そこへ様子を見に来た湘児が察察児に声をかける。
水雲楼一団が法事の供養していると、座長が呼び出され、范湘児の所へ案内される。水雲楼に臘月紅という名の者がいるかと質問される座長。すると、縄で縛られた臘月紅が引っ張り出され、湘児の罵倒が始まる。水雲楼は賊の集まる薄汚い場所だ、臘月紅が人の家に忍び込んだ目的は盗みか誘拐かと並べる。臘月紅を問いただす細蕊を遮り、下劣な人間の話など聞きたくないから、戻ってから尋問しろと言い放つ。細蕊はこの場ではっきりさせたいが、湘児は役者は悪人だと決めつけ、禁句である蒋夢萍の名を出し、挙句の果てに、商細蕊の義父が侍女たちの前で跪き頭を地面につけたと中傷する。名優とはいっても権力者の太鼓持ちばかりでお金に貪欲、いつかは放火や殺しもやりかねないと言う始末。誤解を解こうとする商座長の話を聞かず一方的に立ち去る湘児。細蕊は臘月紅を蹴り飛ばし、怒って立ち去る。
水雲楼に戻ると、臘月紅は仕置きとして座長に尻を叩かれる。程家に行ったのはお嬢様に話があっただけと臘月紅は弁明するが、お嬢様と話せる身分かと言われ、座長も二旦那と話してると口答えする臘月紅。仕置きが足りないとまた叩き始める座長。そこへ鳳台がやって来る。座長は帳簿を渡し、奥様が怒るから賊の隠れ家には来ないでと鳳台に伝える。様子がおかしいので、何があったのか小来に尋ねると、口八丁の奥様がご存じだと言って立ち去る。
隆春班には陳紉香が北平に戻ったと知り、群がる記者たちの姿があった。陳先生の取材と撮影会が行われる。
その後、叔父・姜栄寿の家に着き、跪いて挨拶する陳紉香。姜栄寿は紉香をねぎらい、好物を用意したと席へ座らせる。しかし姜栄寿は食事に箸をつけず、今後の一座が心配だと語りだす。陳紉香が行脚に出たあとの商細蕊とのいざこざを聞かせる。細蕊の人気が上昇し、客を独占して他の一座は飯も食えないと登宝が口をはさむ。商細蕊を称賛する新聞の記事を見せ、呼び戻した理由を明かす。
一方の水雲楼では、鳳台はあてにならないと杜洛城が説いていた。程鳳台は妻方の財で家を再興した男だから、湘児には逆らえず、劇場の買い取り計画は白紙になるだろうと苦言。鳳台を遠ざけている座員たちは、鳳台が作った掟や契約がまだ有効なのか疑問に思っていた。座長に尋ねると、規定の内容を覚えてないようだが、有効だと言う。座員が第1条から唱え、内容を再確認していく。給金は一律8元だが年末には報奨金を渡し、年功序列は廃止するが、芸の修行に励めば誰でも舞台に立てると説明し、解散となる。
姜栄寿の家では、まだ登宝が商細蕊の不満を言っていた。伝統を守らず、度を越えて台本を変えると言うが、陳紉香は商細蕊の演技は新鮮で特に問題はないと考えている。しかし、姜栄寿が伝統を無視する商細蕊の演技に怒り心頭だと聞いて、勝手が過ぎては良くないと姜栄寿の意見にあわせる。本当は関わりたくない陳紉香だったが、商細蕊と対決するよう依頼されてしまう。
水雲楼では、座長と杜洛城が読み合わせをしていた。3つの台本全てを却下したのは、どれも型にはまりすぎだからと座長が釈明する。どこかで見たような設定ばかりで、斬新な人物が欲しいと注文をつける座長。杜洛城も同意するが、客は定番の京劇に慣れ親しんでおり、魅力的だと思わなければ観に来ないと弁解する。世は清朝から中華民国に変わり、人々の身なりも変わった今、京劇も進化していいと細蕊。新しい台本を書いてはだめなのかと問いかける。細蕊の言葉が心に響いた杜洛城は、ある台本を座長に見せる。女官から頂点に上り詰めた成帝の皇后”趙飛燕”の演目だ。成帝は趙飛燕に夢中になり、子孫を絶やし命も落とした話と聞き、細蕊はこの女を演じると即答する。しかし問題があった。趙飛燕には手のひらの上で踊れたという伝説があり、この舞を舞台でどう表現するかが課題となる。これが演目の売りになるのでどう舞うかはとても重要なのだ。
そこへ陳紉香が挨拶に来る。細蕊の身なりを見た紉香は、梨園の顔ともいえる役者なのに、身なりや髪が整ってないとあげつらう。そんな紉香に早く用件を言えと急かすと、姜栄寿から商細蕊と勝負するよう言われたと伝えられる。受けてたつ細蕊。新しい演目で勝負すると公言する。同時にそれぞれ公演を行い、客数の多いほうが勝ちとなる。決着をつけるだけではつまらないと、賭けを持ちかける。負けたら1年間休演と紉香が提案する。細蕊は受け入れ、もう一つ条件に、負けた方は丸刈りになることを加える。
そろばんをはじく湘児の所へ鳳台が近づき簪を髪に挿す。劇場を買うのかと湘児が問いかける。鳳台は、京劇はいい文化だから社会貢献だと説明する。これに対し、商細蕊が世のためになるかと湘児は反論する。善人でもない商細蕊は腹黒く、弟子に察察児を誘惑させたと言い放つ。そんなことは信じられない鳳台に、商細蕊は程家を陥れる気だと追い打ちをかける。簪を外し投げ捨てる湘児は、鳳台に愛人を作るにも役者はよしてと言い残す。
その夜、臘月紅は范湘児に侮辱された言葉を思い返していた。察察児に渡せなかったお礼の品を放り投げ、腕輪に目をやる。師姉の言葉を思い返す。自分の身は自分で守れ、役者を辞め幸せになる道を歩めと。
第12話 秘伝の絶技
新演目「趙飛燕」の配役を決める日を迎えた水雲楼。商細蕊は新規定に基づき年功序列を排除したため、師叔たちからひどく反感を買う。一方、程鳳台は范湘児を怒らせたまま、夫婦間に不穏な空気が流れる。陳紉香は姜栄寿から秘伝の技“仙人歩法”を教授され優位に立つが、商細蕊は趙飛燕の舞をどう演じるか行き詰まってしまうのだった。
配役を決める日が来た。新たな規定では、学歴を問わず競争の機会を与えられ、全員が同じ条件で競うことができる。座長は役ごとに並ばせ、まず最初に大聖を指名する。しかし自信がない大聖は、古株だといって優先されるのは気が引けると若者に譲るが、座長にせきたてられ、杜洛城の演奏に合わせて歌ってみせる。
九官鳥に歌を教える寧九郎。そこへ斉王が来る。商細蕊は騒動を乗り越えて北平に落ち着いたが、程鳳台が救いの手を差し伸べなければ、寧九郎が姜家に乗り込むと斉王は思っていた。寧九郎はそこまで関わるつもりはなく、北平の梨園で名を上げられたのは細蕊の実力で、今後も細蕊の実力次第だと見ている。しかし姜会長が甥を呼び戻したのは、孝行をさせるためだけではないと分かっている。寧九郎は、商細蕊に3年間劇を教えていたが、師と仰がれそうになり会うのをやめた。その理由を尋ねても九郎は答えない。
水雲楼の配役が決まり、座長が名前を呼ぶ。今回は役者に何人か入れ替わりがあった。臘月紅が役をもらう。若いうちに経験を積むべきだと杜洛城。仕置きのケガを物ともしない点も役に合っていると太鼓判を押され、恐縮する臘月紅。臘月紅に決まり、師叔が役から外された。不満な師叔は、脇役は臘月紅にやらせろと座長に頼む。師叔の演技が臘月紅に劣るのかと別の兄弟子も訴える。努力して技を磨かぬかぎり演技の力は衰えていくものだから、実力がなければ高齢でも脇役になると洛城が諭す。実力不足と言われたらどうしようもないと出ていく師叔たち。
程鳳台の屋敷で、范湘児と察察児が口論。外まで聞こえてくる。察察児の入学の話なのに、湘児が家や先祖の話を持ち出すのを聞いて、不思議がる程鳳台。怒って飛び出した察察児を鳳台が追う。湘児の古い考えには鳳台も賛成しない。しかし新しい考えを湘児に理解させるのは無理だから表向きは衝突をさけ、裏でこっそり動くようアドバイスする。家を出て外の世界を見てみたい察察児は、学校以外に家を出る理由がないと言う。これからは女性も教育で視野を広げるべきだと、鳳台は必ず学校へ行かせることを約束する。
まだ腹を立てている湘児は、鳳台に水雲楼一座と早く手を切るよう催促する。鳳台は事業として手掛けている。京劇は美しく、商細蕊はまれにみる逸材で価値がある。だが湘児は全く理解せず、遊びを事業にしたと見ている。湘児は春杏を呼び、寝床を片付けるよう指示し、鳳台を書斎へ追い出す。
街をうろつく臘月紅が姜登宝たちと鉢合わせする。立ち去ろうとする臘月紅を取り囲み、梨園では長幼の序列を重視すると、挨拶せず逃げようとした臘月紅に絡む。母親がおらず礼儀を知らないなら、親のかわりにたたたき込んでやると、臘月紅を押さえつけてボコボコにする。水雲楼には性根の腐ったやつらばかりと言う登宝に、隆春班こそクズの集まりだと返す臘月紅。口答えする臘月紅を利用し、登宝は陳紉香から商細蕊への言づてを済ませようとする。
見かねた包子屋の主人が水雲楼へ知らせに行く。臘月紅という子がこの一座にいるかと聞かれ、ツケの取り立てに来たと勘違いする座長。そうではなく街で裸に柱に縛り付けられていると事情を説明する。練習を切り上げ、武器を手にし、助けに行く。
臘月紅の縄をほどいた座員が背中に書かれている文字を読む。”12月9日 舞台で会わん”。登宝たちが自分を使って座長の顔に泥を塗ったと訴える臘月紅に、細蕊が服を着せる。
水雲楼が殴り込んできたと知らせが入る。隠れようとする姜登宝のところへ細蕊が殴りかかる。楽屋に乗り込むのは掟に反すると制するが、細蕊を止めることはできない。服を剥いだのも、先に手を出したのも登宝だと断言する臘月紅。やめてくれと乞う登宝の髪を引っ張り、外へ放り出す。暴力沙汰になれば会長が黙っていないと脅す登宝の言葉を聞いた支配人が止めに入る。非礼なら自分が詫びるという支配人に迷惑をかける気はない細蕊。ただ、登宝から受けた仕打ちをそっくり返さねば梨園での立場を失うと、登宝の服を脱がし背中に書く。”分かった”という返事。登宝を縛り付けると、居合わせた群衆に新演目”趙飛燕”を披露すると宣伝する。
その夜、商会の鄭会長の一団が絡子嶺へ向かっていた。匪賊が出るから夜のうちに越えるよう急ぐ一団の元へ匪賊が現れる。
姜家では、商細蕊が新演目を出してくると聞いた会長が、甥・陳紉香に演目を尋ねていた。”扈三娘”だと聞き、北平の観客は見飽きているので、代わりに”閻婆惜”を勧める。姜家の仙人歩法を教えるつもりなのだ。仙人歩法は姜家秘伝の絶技で、閻婆惜の演技で使えば大絶賛されるだろう。姜栄寿がこの歩法を披露し西太后から貴重な衣を賜ったと聞き、期待に応え必ず勝つと甥が跪く。
鏡を見つめる商細蕊に、洛城が記事を読み上げる。”隆春班 対戦演目を決定 陳紉香は閻婆惜役を演じる”。閻婆惜の役では姜家秘伝の仙人歩法を使う。つまり、会長は秘技を甥に教えてまで勝とうとしているのだ。趙飛燕で対抗できるか疑問に思った洛城は、舞い方は思いついたかと細蕊に尋ねる。細蕊の演目は北平中の話題なので、もはや後戻りできない。頭を痛める洛城に、細蕊が舞いを少し見せるが、それは”上小墳”だと見破る。仙人歩法と比べたらまったく美しくないと苦言。趙飛燕という女性は、仙人のような雰囲気を持ち、軽やかで酒脱だと表現する。役作りの手助けをしていると洛城は言うが、劇は血の通う人間がやるもので、言葉を押し付けたり想像で論じたりするなと細蕊が言い返す。話しても無駄だと散歩に出かける洛城が、趙飛燕は酒脱軽妙だと言い残す。
役を奪われた師叔が、臘月紅に当たり散らす。しかし、臘月紅は役を譲る気は全くない。言い争うところへ座長が止めに入る。話を聞いていた座長は、役は臘月紅のものだと明言する。紙切れ1枚で干されたと師叔が不満を言うが、北平に来てから師叔の発声練習を見た覚えがない座長は、今回は若い者に譲り、芸を叩き直すよう忠告する。ふてくされた師叔は居場所がないと出ていく。
鈕白分が入れ違いでやって来る。対決を辞めるよう頼みに来たのだ。しかし隆春班を恐れたとばかにされたくない細蕊は辞められない。会長は師伯なのだから考え直せと鈕さんが説得する。1年休演という条件に二旦那は何と言っているのかと尋ねても、話す必要はないと細蕊は突っぱねる。気性は知っていたが、やはり無駄足だったかと鈕さんは残念がる。
鈕さんの話を聞いた商細蕊は廟へ拝みに行く。寧先生は嫌なことがあった時よく廟へ行ったと聞いたのだ。人は誰しも悩むものだが、乗り越える術は必ずあるという鈕さんの言葉を信じ、菩薩様にお願いする。”趙飛燕”をどのように舞えばいいかご教示くださいとお願いする。すると、外から”双揺会”の歌が聞こえてくる。外へ見に行った細蕊に、人力車の車夫が近づき、鳥を連れた人から預かったとモノを渡す。”九天玄女救世真経”だった。早速中を見てみると、そこにヒントがあった。その絵巻は寧九郎からだった。絵を送れば細蕊の理解力と風格があれば助言は不要だとみた寧九郎は、細蕊がこの試練を乗り切れた時、梨園の大物になれると見込んでいる。
酒屋で師叔たちが商細蕊の悪口を言ってる。その場に居合わせた隆春班の座員が、個室にいる登宝に知らせに行く。その話を聞いた登宝は驚喜する。
夜更けに屋根の上を歩く座長。見守る座員たちは、今更新たな技を学ぶ必要はないと思っているが、名優になるためには必要な過程だと洛城が語る。悟りを得て技を極みにまで高めるには無我の境地が必要、さもなくば入神の域には行けぬ。かつて寧九郎も大変な苦難を得てようやく悟りを得たという。屋根の上で舞う細蕊は、何かを掴んだよう。
日が明け、洛城に舞いを見せる細蕊。歩き方は完璧だが何かが欠けているとの評価。一気に見せたらつまらないと焦らす細蕊は、キジの尾を使い、太鼓の上で踊るつもりだと明かす。陳紉香とは違いすべて魅せる。これを聞いた洛城は、完璧だ、天才だと褒め称える。今すぐ最高の台本にすると興奮して出ていく。一方、細蕊は、山は越えたが程鳳台の意見が気になる。
その頃、姜登宝は、会長にとって喜ばしい知らせを聞かせていた。契約書を見せ、水雲楼の古参3人を引き抜いたと伝える。加えて新演目の話も聞き出していた。
今回の記事でご紹介しているエピソード
今回の記事でご紹介しているあらすじ第9話~第12話が楽しめます😃